あなたの恋を描かせて
*8*
「びっくりしたよ。浅葱からメールなんて」
「オレだって用事があればメールぐらいするよ」
「ふふ、そうだね」
むしろ用事があるときしかメール来ないもんな。
だから珍しいんだけど。
くすり、と笑うと浅葱は不思議そうな目をわたしに向けた。
浅葱とわたしは双子で、浅葱はわたしの双子の弟。
二卵性だから顔はあまり似ていないけど、黒い髪や目の色、肌の色や雰囲気はそっくりだね、ってよく言われる。
「それで、わたしに用事って?」
そう言うと、浅葱は少し顔を赤くして、買い物、と呟いた。
「買い物?」
意外、というかそれだけ?
買い物なら他の人といっしょでもよかったんじゃ……
きょとん、としたわたしに更に浅葱は顔を赤くした。
「その、母さんが、今日は葵が早く学校終わるからって言ってて……
お、女心なら葵の方が分かるんじゃないかって……」
恥ずかしそうに言う浅葱にピンときてしまった。
「もしかして……好きな子へのプレゼント?」
「、大きな声出すなよっ」
ごめんと謝って浅葱を見ると、顔が真っ赤になっていて。
初めて見る意外な姿に笑みがこぼれた。
浅葱から詳しいことを聞くと、どうやらその子は明日が誕生日らしく、プレゼントといっしょに告白するつもり、らしい。
「そいつ、何が欲しいとか言わないし、オレも何買えばいいか分からなくて……」
それでお母さんに相談したところ、わたしの方がいいんじゃない?ということで。
なるほどなるほど……
「よし、じゃあわたしのオススメの雑貨店行ってみよ?」
大事な弟のためだもん。
わたしを頼ってくれた浅葱に、たまにはお姉さんらしいところを見せないと!
サンキュ、と小さく言った浅葱の手を引いて、わたしは雑貨店に向かった。