あなたの恋を描かせて
「美術部?」
わたしの抱えているスケッチブックを見て、城越くんが話しかけてくれた。
「は、はい」
「何描いてるの?」
「えっと、わたしは主に植物とか、風景とか……」
それから城越くんはわたしが気まずくならないように、いろいろ話しかけてくれた。
クールって聞いてたけど、全然そんなことない。
むしろすごく優しいと思う。
こういうところが、城越くんがモテる理由なのかな……?
「着いたよ」
「は、はい」
長いようで短かった体育館から校舎までの距離。
緊張はしたけど、不思議と嫌な時間ではなかった。
「じゃあ、俺行くから」
「え?あ、あの!!」
わたしの声には振り向かずに、城越くんは背中を向けて走っていってしまった。
あ、肩濡れてる……
わたしを濡らさないようにしてたから?
「お礼も、謝ることもできなかったな……」
ぎゅっと抱えていたスケッチブックを抱きしめる。
わたしは城越くんが行った方向をしばらく見つめていた。