あなたの恋を描かせて




むむっ……少しむかつくけど、まぁ浅葱が笑ってくれたからよしとしよう。



「サンキュ、葵。じゃあこれ買ってくるわ」



外で待ってて、と言われたのでわたしはおとなしく外に出た。



浅葱の好きな子かぁ……どんな子なのかな?


そういえば、浅葱から恋愛のことを聞くのは初めてかもしれない。


あんなに赤くなって……



思い出すとなんだか浅葱がかわいく見えて、くすくすと笑みがこぼれる。



「何笑ってんの」



ぽふ、と頭を叩かれて振り向くと浅葱がいた。



「もう買ったの?」


「ん、」



綺麗にラッピングされた包みを見る浅葱の顔が嬉しそうで。


わたしもつられて頬が緩む。



「じゃあ、帰ろっか」



浅葱と手を繋ぐとふりほどかずに繋いでいてくれる。


わたしたちにとってはこれが普通なことだけど、他の人から見ると珍しいみたい。


双子だからか、他の姉弟と比べて近いところにいるというか。


そのせいかもしれないけど、お互いを自分のように思っているんだと思う。


だから、こういうの意識したことないんだよね。


浅葱がどう思っているか、本当のところは分からないけど。



「浅葱に彼女が出来たら、あんまりこうやってお出かけできないね」



ふと、そんなことを思った。


だってもし浅葱と出かけて、二人っきりのところを見られたら誤解されちゃうかもしれないもんね。



「それは葵も同じだろ」


「あ、そっか」



そこまで考えなかったなぁ。


葵ってちょっと抜けてるよな、と馬鹿にされたように笑われて。


少しムッとしました。


わたしの方がお姉さんのはずなのに……



「浅葱……プリクラ撮ろっか」


「は?嫌だよ」


「いいじゃん、ね?」



ぐいぐい引っ張って近くにあったゲームセンターに入る。



「これで二人で出かけるのも最後かもしれないし、記念ということで」


「絶対に嫌がらせだろ」



なんだかんだ文句を言いながら、浅葱はいっしょにプリクラを撮ってくれた。


こういうところ優しいんだよね。





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