あなたの恋を描かせて
「やっぱ、顔のつくりはあんま似てないな」
浅葱はついさっき撮ったばかりのプリクラを、興味深そうに見ている。
浅葱曰く、プリクラは何回か撮ったことがあるけど、撮ったものは全部友だちに渡ったみたいで。
ちゃんと見るのは今日が初めてみたい。
「でも全体的には似てると思うけど」
「まぁな」
少し話していると、浅葱のケータイが鳴った。
「もしもし?うん、いっしょ」
多分、お母さん、かな。
微かにお母さんの声が聞こえたから。
「葵。母さんから」
ケータイを渡されて、もしもし?と言うと、あーちゃん?というお母さんの声が聞こえた。
「どうしたの?」
「ごめんねぇ。あーくんには言ったんだけど、お母さんね、帰りが遅くなりそうなの。
お父さんもいないし、今外にいるならご飯食べて帰ってくれるかなぁ?」
「うん、分かったよ」
「そう?じゃあねぇ〜」
プッ、と切れるケータイ。
……お母さん、いつも思うけど唐突に電話を切るよね。
「どうしよっか、あーくん」
「仕方ないし、ファミレスでも寄るか。
あとあーくん呼びやめろ」
そんなに嫌がることないのに……
昔はお互いあーちゃんとあーくん呼びだったのになぁ。
ごめん、ごめん、と浅葱に謝りながら、わたしたちは近くのファミレスに入った。
料理を注文して待っている間、浅葱が小さな包みをわたしに差し出した。
「…今日、買い物に付き合ってくれたお礼」
ありがとう、と言ってわたしは包みを受け取った。
なんだろう……?
気になって開けてみると、中から出てきたのは見覚えのあるピン。
「これって、」
「さっきの店で、葵それ見てただろ?」
「気づいてたんだ……」
な、なんか恥ずかしい……
「ありがと、浅葱。大切にするね!」
ニコリと笑うと、浅葱が照れたように頬をかいた。