あなたの恋を描かせて



それにしても……


ちらりと浅葱を見ると、その顔はきょとんとしていて。


メガネの奧の黒い目が不思議そうにこちらを見ていた。



「わたし、浅葱が心配になってきたよ」


「は?」



ますます不思議そうにする浅葱にため息がもれた。



だってこんなに自然にプレゼントを渡すとか……まるで女慣れしているみたいで。


浅葱はわたしの目から見てもかっこいい部類に入ると思うし。


ふとしたときに見せる笑顔とか、ちょっとかわいいし。


それでも本人は気づいていないんだよね。


……将来、浅葱のせいで何人の女の子が泣くんだろう。


本気で心配になってきたよ。



「オレ的には葵の方が心配だけど」


「どうして?」



そう聞いたところで料理が運ばれてきた。



「……とりあえず、食べてから話すか」


「うん」





ご飯も食べ終わって、浅葱がさっきの話だけど、と口を開いた。



「葵、恋愛とかしてないの?」



…………??


あれ、さっきの話ってそんなことだっけ?


心配ごとの話だったよね?



聞かれたことが予想外すぎて、思わずぽかーん、と浅葱を見てしまう。



「普通の女子って恋愛とか、話すのそんなんばっかだろ。葵は大丈夫なのか?」


「えっと……」



つまり、浮いてないか?と解釈すればいいのかな。


言葉が足りないとは思うけど、それが浅葱なりの優しさなんだよね。



「大丈夫だよ。確かにそういう話はするけど……友だちはわたしがそういうのに疎いこと知ってるから」



みんな優しいよ、と言うとそっか、と言って浅葱はコーヒーを飲んだ。



恋愛、かぁ……


最近、わたしの周りで恋の話がいっぱい出てくるなぁ。


ちなつちゃんとか明乃ちゃんとか……浅葱もそうだし。







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