あなたの恋を描かせて
*2*
次の日、学校の玄関で靴を履き替えていると、後ろからぽん、と背中を叩かれた。
「おはよ」
「あ、おはよう、ちなつちゃん」
振り返ると同じクラスの赤崎(あかさき) ちなつちゃんがいた。
「昨日の雨凄かったよね。葵は大丈夫だった?」
「うん」
城越くんの傘に入れてもらったし……
「ちなつちゃんは?大丈夫だった?」
「まぁね」
お互いよかったね、と言いながらいっしょに教室へ向かう。
中に入ると、最近よく話す山中 明乃(やまなか あけの)ちゃんがわたしに向かってきた。
な、何?
突然のことで思わずびくっと肩が揺れた。
「聞いたよ葵ちゃん!!」
「な、何を……?」
「昨日城越くんと相合い傘して帰ったって!!」
「えぇっ!?」
ま、まさか、見られてたの!?
でも、あれは体育館から校舎まで送ってもらっただけだよね?
とぼけてもムダだよ!!とニヤニヤして笑う明乃ちゃん。
心なしかちなつちゃんまでニヤニヤしているような……じゃなくて!
「た、確かに傘には入れてもらったけど、それは体育館から校舎までであって……」
いっしょに帰ったなんてそんなことは決して……!!
「え。そうなの?」
きょとん、とした顔になる明乃ちゃんにわたしは必死に頷く。
「なーんだ。つまらないなぁ〜」
つ、つまらないって……
少し残念そうな明乃ちゃんに苦笑い。
でも誤解が解けてよかった……
明乃ちゃんは噂好きだから、もしかしたらあの誤解だらけの噂が流れちゃうところだったよ。