あなたの恋を描かせて
*9*
「ふぁ……」
落ちそうになる瞼と戦いながら、どうにか起きて学校に行く準備をする。
それはどうやら浅葱も同じだったらしく。
朝お互いの顔を見て苦笑してしまった。
「あ、葵それつけてくの?」
「これ?もちろん」
だって浅葱がせっかくわたしに買ってくれたものだし。
ちょっとちなつちゃんに自慢したいなぁ、なんて思ったりもして。
「似合わない、かな?」
「いや、よく似合ってると思うよ」
「本当?」
身内贔屓だと分かっていても嬉しいよ。
城越くん、気づいてくれるかな。
なんて、ちょっと期待してしまう自分にびっくりする。
こういうのって恋の効果なのかな。
ちょっとしたことでも気にしてしまう。
面倒だけど、全然面倒じゃない。
「かわいいって、思ってくれるかな……」
小さく呟いたその言葉に、浅葱は複雑そうな顔をしたけど、わたしは気づかなかった。
朝から浅葱に何度も心配されながらも、大丈夫だと言い聞かせてわたしは学校に向かった。
「おはよう」
「あ、おはよ……」
「…??」
玄関でちなつちゃんを見つけて声をかけたけど……
いつもと、ちなつちゃんが違う。
わたしの気のせい?
でも、どこか態度が違うような……
「そういえば葵…」
「うん?」
「あ、いや、その……」
……やっぱり、どこかヘン。
「ちなつちゃん?」
「そ、そのヘアピンどうしたの?」
「これ?」
気づいてくれたんだ……
そのことが嬉しくて、笑みがこぼれる。
「昨日ね、買ってもらったの」
かわいいでしょ?と笑うわたしを見て、ちなつちゃんは複雑そうな顔をした。