あなたの恋を描かせて
「ちなつちゃん、何かあったの?」
教室につくとわたしはちなつちゃんの席に向かった。
今日のちなつちゃん、絶対にヘン。
何かあったとしか思えない。
「わたしなんか、あんまり役にたたないと思うけど、悩み事があるならいつでも相談にのるからね!」
ありきたりな言葉しかかけられない自分が情けない。
でも、本当に悩みがあるなら相談してほしい。
ちなつちゃんは、わたしの大切な友だちだから。
「葵、じゃあ聞くけど……」
そう言ったときに、ガラリとドアが開いて先生が入ってきた。
うぅ……タイミングの悪い……!!
「ちなつちゃん、あとでちゃんと聞くから!」
残念だけど、仕方ない。
あとでちゃんと話そう!
と思ってたけど、毎回の休み時間に何かしらの用事ができて。
結局お昼休みになってしまった。
「今日は久々に中庭行かない?」
「え、でも楠くんたちは?」
「あー……颯たちは今日いっしょに食べれないって」
「そうなんだ……」
じゃあ、今日は城越くんと会えないのかな。
ちょっと、いやかなり残念。
でも会えなくてちょっとほっとした気もするような……
矛盾したこの気持ちが成立するのが恋なんだ。
恋ってすごいなぁ……
「じゃあ、行きましょ?」
「うん」
わたしたちは中庭に移動した。
珍しくあまり人がいなくて、わたしたちは人気のベンチに座る。
明乃ちゃんと来てたときも座れたことなかったのに。
今日は運がいいなぁ。
空は……雨が降りそうだけど。
「葵さ……昨日の男子のこと、どう思ってるの?」
「え?浅葱のこと?」
どうして今浅葱のことが出てきたのか分からない。
けどちなつちゃんの目は真剣そのもので。
わたしも真剣に答えないと駄目だと思った。