あなたの恋を描かせて
お邪魔します、と一言言って中に入る。
リビングに向かう途中ちらちらと回りを見渡す。
どこが、とは言えないけど、どことなく温かみのある家だな……
「なんだか葵っぽい家ね」
「……葵と母親は趣味が似てるから、かな。
この家、母さんがデザインしたらしいよ」
「へぇ、じゃあお母さんはデザイナー?」
「いや、絵の教室の先生」
ガチャ、とリビングの扉を開けて中に入る。
適当に座ってて、と言われて颯と赤崎さんが座り、向かい側に俺が座った。
少し回りを見ると壁に額縁に入った絵が飾ってある。
二人の赤ちゃんが寄り添って、気持ちよさそうに眠っている絵。
優しい絵だった。
「それ、昔母さんが描いたやつ」
テーブルにお茶を四つ置いてから、浅葱が絵に目を向ける。
「オレと葵だって」
「これが……」
しばらくその絵を見つめる。
「葵が絵を描くようになったのも、母さんの影響」
「なるほど……あの絵の才能はお母さん譲りってわけね」
納得したように頷く赤崎さん。
「浅葱くんも絵描くの?」
「……まぁ。けど、どっちかというと絵よりは彫刻のがするかな」
しばらく浅葱の話や水無瀬さんとの思い出話を聞いていると、誰かのケータイが鳴った。
「ちょっとごめん。もしもし?」
リビングを出ていく浅葱の後ろ姿に、赤崎さんがキラリと目を輝かせる。
「ねっ、もしかして彼女かしら?」
「さぁ、どうだろうね」
「んもぅ!颯も少しは考えなさいよね」
ムッとする赤崎さんに颯は苦笑する。
「あんまり大声出すと浅葱に聞こえるよ?」