あなたの恋を描かせて
*11*
side 日向
目を覚ました水無瀬さんは、ボンヤリしながら何度かまばたきを繰り返してこちらをみた。
熱のせいか、その瞳はいつもより潤んでいる。
「しろ、こし…くん……?」
ちょっと舌足らずな声で名前を呼ばれて心がざわめく。
「大丈夫?」
できるだけ平常心を保って水無瀬さんに声をかける。
「んー……あつい」
額に触れていた手がそっと取られたかと思うと、水無瀬さんは俺の手を頬にあてた。
いきなりのことで驚いていると、水無瀬さんが気持ちよさそうに目を閉じる。
「ふふ……冷たくて気持ちいい」
無邪気に笑う姿にドクン、と心臓が大きく鳴った。
手から伝わる頬の熱さや柔らかさに、昨日のことが思い出されて……
脳の奥がぐらりと揺れるような、何かに呑み込まれてしまいそうな感覚に侵される。
ダメだ……
このままじゃ昨日の二の舞になってしまいそうで怖くなり、そっと手を離す。
少し寂しそうな目を向ける水無瀬さん。
「今日は、水無瀬さんに謝りに着たんだ」
「謝る……?」
きょとん、として俺を見たかと思えば、恥ずかしそうに布団を顔まであげる。
見られたくないのか、顔を隠す水無瀬さんにズキッと胸が痛む。
そう、だよな……
無理矢理、あんなことをして。
しかも好きでもない相手と。
嫌われても、仕方ないと思う。
伸ばした手にぐっと力を入れて引き戻す。
「ごめん……昨日はどうかしてたんだ。
謝って済むことじゃないけど、どうしてもちゃんと、謝りたかったんだ」
布団を被っているから、水無瀬さんがどんな表情をしているのか分からない。
「本当に、ごめん……」
そろそろここにいるのも限界な気がする。
ちょうどケータイあるし、颯呼び出してドアを開けてもらうか。