僕が君を好きなわけ


思い出すのも恥ずかしい。

僕は初めて華乃に会った時、泣いていた。
近所の悪ガキ共に、いじめられて。

その当時、僕は近所の子達よりも一回りほど小さく、さらに…こんな事言うのもなんだが、可愛かったらしい。
つまりは、女の子と間違えられていじめられていたのだ。

あの日も。


何人かに囲まれて、僕は小突き回されていて。
そこへ。

『なにやってんのよ!』

僕と同じくらい、いや、僕よりも小さな子が平然と自分よりもずっと大きな子に言い放った。
茶色のふわふわのショートヘアを風になびかせ、小さな体で目いっぱい虚勢を張るように小さな手を腰に当てて。

そして、リーダーらしき子に、びしりと指を差し。

『すきなこいじめるなんて!おとこのかざみどりにもなれないわよ!』

何の根拠もない断定。
…それにたぶん、風見鶏じゃなくて、風上にも置けないと言いたかったんだと思う。
皆の脳内には、屋根の上でかっこよくポーズをキメる男前が連想された。

それを口走ったのが他の誰かであれば、大爆笑の末に突っ込みを山盛りてんこ盛り頂戴することになっただろうが。
あの啖呵の切り具合は、その場にいた誰もが間違いを突っ込めないくらい圧倒された。


そして、誰も何も言えないうちに、そのまま華乃の武勇伝が始まる。


5人、そう、記憶が確かなら5人いた。


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