シオン【完結】
「あ」
「あ」
お互いに静止した。
「久美、ちょっといい?」
「……」
久美は頷くと、博美に断って俺の後ろを付いて来る。
少しだけ人気のない場所に行くと、俺は口を開く。
「…茶化してごめんな」
そう言う俺に、久美は首をぷるぷると振った。
「怒ってないんだけど、ちょっと仲直りするタイミング逃しちゃったと言うか」
「だろうな」
「祥君、怒ってる?」
久美は心配そうに俺の顔を見上げる。
それに眉を下げて答えた。
「いいや、全然。寧ろ久美と話せなくてへこんでる」
「そっか。じゃあ、話してみる」
「一緒に行くか」
「うん。あ、昨日はありがとね」
「あはは、力になれてよかったよ」
そう笑いながら教室に戻ると、何やら教室内が騒がしい。
どうしたんだろうと覗き込んでみると、その渦中にいるのは祥太郎と同級生だった。