シオン【完結】

「あ」
「あ」


お互いに静止した。


「久美、ちょっといい?」

「……」


久美は頷くと、博美に断って俺の後ろを付いて来る。


少しだけ人気のない場所に行くと、俺は口を開く。


「…茶化してごめんな」


そう言う俺に、久美は首をぷるぷると振った。


「怒ってないんだけど、ちょっと仲直りするタイミング逃しちゃったと言うか」

「だろうな」

「祥君、怒ってる?」


久美は心配そうに俺の顔を見上げる。
それに眉を下げて答えた。


「いいや、全然。寧ろ久美と話せなくてへこんでる」

「そっか。じゃあ、話してみる」

「一緒に行くか」

「うん。あ、昨日はありがとね」

「あはは、力になれてよかったよ」


そう笑いながら教室に戻ると、何やら教室内が騒がしい。

どうしたんだろうと覗き込んでみると、その渦中にいるのは祥太郎と同級生だった。
< 104 / 236 >

この作品をシェア

pagetop