シオン【完結】
デジャヴ


「…何があったわけ?」


久美と一緒に中に入ると、一斉に視線を浴びる。
その視線はどうしてだか、好意的でない。

ひそひそと話してるのも聞こえた。



「嘘じゃねえって言ってるじゃん!昨日、あいつらは一緒にいたんだよ!」


そうやって、祥太郎と対峙していた同級生の野田が叫ぶ。
それに俺と久美は息を呑んだ。


「はあ!?りょうと久美がどうしてだよ!でまかせ言ってんじゃねえよ!」

「なら本人に聞けばいいだろ!!」


祥太郎は野田の言葉を信じたくないのか、反論していた。
だけど、こっちを振り向き俺の目を真っ直ぐに見据えて口を開く。


「りょう、嘘だろ?」

「………」


何も、言えない。



「…嘘、だろ?」


祥太郎の声が震えている。
昨日、俺が何をしていたかってのは話してたから。


だから、嘘だって信じたかったんだ。

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