シオン【完結】
「…りょう」
酷く、低い声。
「俺、お前の事信頼してたんだけど」
「……うん、ごめん」
「昨日俺が久美の事話した時、心の中で笑ってたのかよ?」
「ちげえ」
「……はあ」
大きな溜め息をつくと、祥太郎は髪の毛をかきあげる。
「…でもさあ」
さっきまでの鋭い視線じゃない。
祥太郎は眉根を寄せて、辛そうな顔をして。
「久美と一緒に嘘をついたのは事実だろ?」
「……」
そうだ。
それだけは紛れもない事実だ。
どんな理由があろうとも、俺は祥太郎に嘘をついた。
久美と一緒に。
祥太郎が尤も信頼してるであろう、二人で。