シオン【完結】
「久美ぃぃ!!!!!」
その人は祥太郎だ。
祥太郎は久美の前に走り寄ると、血だらけの久美を抱き締めていた。
この、光景を見た事がある。
俺の脳裏に浮かぶのは、立場が逆転している二人。
逆転していた筈だった。
そして、俺の望み通り…祥太郎は助かった。
俺はそれが久美だとやっと、認識出来てきて。
ガクッと、足の力が抜けてその場にへたり込む。
「う、そ…だ…ろ」
嘘だろ?
何で、久美が?
―――…俺が呼び止めたから?