シオン【完結】
23:59。
「…は、ロンリーバースデーか」
そう、呟くと。
液晶に映し出されている時刻が、0:00を迎えた。
その瞬間だった。
ぶわっと走馬灯の様に、思い出される記憶。
俺の頭の中を様々な思い出が駆け巡る。
祥太郎の事故の事。
久美と付き合っていた事。
そして、天使の使いだと妙な事を言った男の子の事を。
「っ!!!ぅぐ」
急に甦るその記憶に、俺は口を抑えるとトイレへと走った。
…なんだ、この感覚は。気持ち悪い。
戻したお陰で、少しだけスッキリしたけど、まだ後味の悪さが残る。
洗面所に向かい、顔を思いっ切り洗う。
冷たい水が、幾許か俺の思考を冷えさせてくれた。