シオン【完結】


「…ボクは言った。人の死を変えようとしたら代償が必要だと」


ハッとして、後ろを振り向くと。


そこにはあの、天使の使いと言った男の子がいた。
小さな姿でなく、子供の姿でそこに立っている。


「その、代償が小森久美の命だったんだ」


俺の顔がまた歪む。


「……どうして、久美だったんだよ…」


男の子は淡々と話す。


「あの時、誰かがあそこで死ななければならなかったんだ。
それを変える事は出来ない。
偶々、小森久美がそこにいただけの事」

「…俺が、呼び止めなければ…」

「いや、お兄さんが呼び止めなくても何かしら起きてそこで止まったはずだよ。
だから、お兄さんの所為ではない」

「……だとしたら」


その次の言葉を言おうとした俺の言葉を遮る様に、男の子が酷く冷たい声で言った。
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