シオン【完結】
「……祥太郎は誰を助けたんだ」
それに、祥太郎の眉が情けなく下がる。
悲しそうに俺の顔を見つめた。
「…助けたって言い方するんだな、りょうは。
俺はずっと、誰を殺したんだって思ってた」
「………」
「俺が…助けたかったのは久美だった」
「…え」
久美を助けたかった?
全く、思考が追い付かない。
どういう事なんだ?
「代わりに…俺はりょうを殺した」
「………」
――――――俺を?
「なあ、不思議だよ。
俺の中に、今三つの記憶があるんだよ」
「………」
「二つだけだって、あいつは言ってた」
「……天使の、使いか?」
「そう、そいつ。やっぱ同じだったんだな」
祥太郎は少しだけ目を細める。