シオン【完結】
「あの日、トラックに轢かれて久美は目の前で死んだ。
それをどうしても助けたくて、俺は誕生日前日に現れたあいつの話を受け入れたんだ。
そして、久美を助けようと久美を校門前で留めてたら…りょうが先に歩いて行って。
…俺と久美の目の前で轢かれた」
その事実を、俺はただ聞き入れた。
祥太郎の中にある過去を。
「気付いた時には…もう、りょうは…」
俺はきっと、即死で。
今まで見た祥太郎と久美の様に、きっと酷い惨状だったんだ。
そして、二人の目の前で起きた事だったんだ。
「俺は…久美を助けたいが為に…りょう、お前を犠牲にしたんだ」
「………」
「でもさ、今久美がいない。
…戻ったんだよ。最初に」
「……違う」
「………」
「俺は、祥太郎。お前を助けたかったんだよ」
「……え?」