シオン【完結】
祥太郎はその言葉に、俺を射抜く様に見た。
祥太郎に、どうして三つの記憶があるのか。
きっと、その理由は久美にあるはずだ。
「俺の持ってる記憶は、祥太郎がいないのと今の記憶。
…祥太郎は俺と久美の目の前できっと…祥太郎が見たのと同じ様に死んだんだ。
それを助けたくて……俺は戻った」
「…何で、久美は」
「祥太郎を助けようと引き留めたら…久美が…」
「………」
祥太郎も何も言えないのか、言葉を失っていた。
こんな、辛い記憶達を俺と祥太郎はこれから先も持って生きて行かないといけない。
「何で、俺は死んだんだろう」
「多分、久美が俺を助けたんだ」
「…それの代わりに?」
ぐるぐると廻る俺達の死の運命。
その中で、嘲笑う様に立ってるのはあの天使の使い。
もしかしたら、悪魔の手先なのかもしれない。