シオン【完結】
もしかして。
そんな一抹の期待は抱いていたけど。
「俺の彼女になってくれませんか」
真っ直ぐに見つめられて、私は声が出ない。
ぎゅうっと遼佑の手に力が入る。
嬉しさと、驚きとで私の顔は歪んでたかもしれない。
だけど。
遼佑の目を見て。
ちゃんと見て。
「私も好きです」
って、笑顔で伝えたんだ。
一瞬、見開かれた目。
だけど、遼佑はすぐに私の手を引っ張って自分へ引き寄せると力一杯抱き締めた。
ぎゅうっと強く抱き締められて、苦しい。
それに、まだ人通りもあって恥ずかしい。
でも、幸せな気持ちが全身を駆け巡っていた。
そんな遼佑がぼそっと独り事の様に呟く。