シオン【完結】
バイトに行く遼佑と一緒に家を出て、分かれ道に差し掛かった時に。
「あ、遼佑!」
私は行こうとする遼佑の洋服を咄嗟に掴んでいた。
昔、した様に。
言おうと何度もしたけど、中々出来なくて。
遼佑の部屋で話したら、きっと理由を聞かれそうだし。
バイトで分かれる間際なら、大丈夫かなって。
「どした?」
そうやって、優しく微笑む遼佑は昔と変わらなかった。
…うん。
私はやっぱりこの人を守りたい。
「…今日、何があっても驚かないで。
それで、出来たら何もしないで」
そう言うと、遼佑は目をパチパチとさせた。
「……後…私の事、嫌いにならないで」
全てを知っても。
嫌いにならないで。