シオン【完結】
「その日記帳はりょうが持ってろよ」
「え?」
「うーん、なんつうか、それはりょうが持ってるべきだと思う」
「……わかった」
「まあ、たまーに読ませろよ」
「いつでも来いよ。振られた時とか」
「え。何それ。何で俺架空の彼女に勝手に振られてる設定なの」
「はは。いいじゃん」
「よくねーし」
俺は日記帳を手に持つと、その表紙の久美の丸文字を見て微笑む。
クセのある字。
笑うと笑窪が出来る。
そんな久美を想い返した。