シオン【完結】


「その日記帳はりょうが持ってろよ」

「え?」

「うーん、なんつうか、それはりょうが持ってるべきだと思う」

「……わかった」

「まあ、たまーに読ませろよ」

「いつでも来いよ。振られた時とか」

「え。何それ。何で俺架空の彼女に勝手に振られてる設定なの」

「はは。いいじゃん」

「よくねーし」


俺は日記帳を手に持つと、その表紙の久美の丸文字を見て微笑む。


クセのある字。


笑うと笑窪が出来る。


そんな久美を想い返した。


< 214 / 236 >

この作品をシェア

pagetop