シオン【完結】
「早くね」
「腹減ってないの?」
「減った」
「だろ?」
まあ、いっかと思いながら、駅弁を二人して平らげた。
景色はいつの間にか、都会から田舎へと移り変わっている。
あんなにビルが立ちそびえていたのに、今は民家がそこら辺に広がっていた。
もっと時間が経てば、畑や田んぼが増えるんだろうな。
「そう言えば、あれはどうなった?」
「あれ?」
頬杖をつきながら、景色を見つめる俺に祥太郎が話し出す。
「バイトが一緒の女の子」
「ああ、佳奈ちゃんか」
「佳奈ちゃん?」
「うん、佳奈ちゃん」
「で、どうだったの?」
「どうもこうも…何もないって」
その返答に、祥太郎は不満そうに口を尖らせた。
いや、希望通りの返答出来なくてすみませんけども。