シオン【完結】
「……決めたかな?」
俺の顔を見て、男の子はニッコリと唇に孤を描いた。
「戻れるけど色々とお約束事があるんだよね」
「…うん」
「一つ、過去の人物に自分の事を言ったらダメ。
二つ、戻れるのは一度きり。
三つ、後悔してる事を成し遂げた時に、二十歳になる前の今日の世界に戻って来れる。
だけど、それは今の君の世界でなく、その後悔を成し遂げた後の世界」
「……どういう事だ?」
「まあ、過去を変えちゃうわけだから、それから今までの君の人生も少し変わるわけ。
大幅に変わる事はないと思うけどね」
「成程ね」
「後、その記憶は二十歳になった瞬間に戻る」
「…え?」
「だからね、その“後悔を成し遂げた後の世界”で二十歳になった瞬間に思い出すんだ。
“後悔を成し遂げる前の世界の記憶”と、“後悔を成し遂げた後の世界の記憶”を。
二十歳になったら二つの人生の記憶が君の頭にあるわけだ」
「………それって大丈夫なのか?」
「うん、結構皆平然としてるよ。
まあ、たまに泣いたりとか発狂したりとか、おかしくなっちゃう人もいる」
「………」