シオン【完結】
そこにいたのは、中学生の久美だった。
それに俺は目を見張る。
「まった怒られてたの?祥君と遼佑」
クスクスと笑って、祥太郎の濡れた髪の毛をハンカチで拭う。
……あ、そうか。
この時、久美は祥太郎の彼女だ。
少しだけ胸が痛い。
けど、こっちが本当は正しいんだ。
大丈夫。
もしも、祥太郎が生きていてくれるなら俺は久美を諦めるから。
「はい、遼佑も」
そうやって、俺の髪の毛に久美が触れた。
「ちょ、俺はいい!」
思わず仰け反ると、久美は悲しそうな顔を見せる。
…そんな顔見せるなよ。
「どうした、りょう?」
「いや、久美も祥太郎の彼女なんだから気安く俺に触らないの!」
「俺はヤキモチなんか妬かないぞ」
「それとこれとは別!」
「なんか…朝からおかしいな、お前。熱でもあんのか」
「あー。そうかも。体調悪いかも。
ちょっと寝て来る」
「え。まじで」
吃驚してる祥太郎に、俺は手をひらひらとさせると一人で保健室へと向かった。