シオン【完結】
「いや、ごめん。本当に何でもなかったんだけど、久美が気にしてたんなら大丈夫って言っておいて。
さあ、帰ろう、待ってるだろ、久美」
そうやって、笑顔を向けると祥太郎もやっと笑顔を見せた。
「ああ、そうだな」
久美の元まで行くと、久美は俺達を見てニッコリと笑う。
大好きな、その笑顔。
笑窪が出来て、本当に愛らしい。
大丈夫だ。
久美に笑いかけられる。
祥太郎の隣に並んだ久美を見て、そう思う。
分かれ道まで、俺達は色々な話をして帰った。
二人と別れて、家に到着した俺は自分の部屋に入ると部屋着に着替える。
それからベッドに寝転んだ。
「………」
天井を見つめながら、事故の事を考える。
あの日、何があったっけ。