秘密
「先生、彼女とかいるんでしすか?」


「いないけど…今は実習のことで一杯なんだ。ごめんな」


「わかりました…」


おっ。終わったかな?


そして、目の前を女子生徒が走っていく。


ふぅ。これで戻れる。


「…なに、盗み見?」


えっ?


声のする方に視線をあげると、そこには加賀美先生が立っていた。


あっ…やばっ。


「盗み見なんてしてませんよ。たまたま通りかかったら、2人がいて…聞こえないように耳塞いでたんで、聞こえてないですよ」

「…」


何、この視線。睨まれてる?


「別に言いふらしたりしませんから…」



そう言って、立ち上がった。


「じゃあ、さようなら。先生」





なーんて事があったな。そういえば。


あの時は、本当にたまたま通りかかっただけだったし。

加賀美先生にも興味がなかったから、気に止めてなかったよ。


そう言えば、あれ以来先生は、どことなく私に対して遠慮してた気がする。


どんな風に?と聞かれても何て言ったらいいかわかんないけど。


雰囲気みたいなのが。


あの時の視線も、この前のような視線だったな。











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