博士と秘書のやさしい恋の始め方
昼休みになって、私は美緒に念を押された「部活」に行った。

部活といっても実際は愛好会くらいの小さな集まりで、B研では確か――文化系の華道部と書道部と川柳倶楽部、運動系の卓球部が活動中のはず。

いずれも福利厚生の一環とて研究所が認めた余暇活動で、所内の設備が使えたり、幾ばくかの活動費が支給されている。

美緒と私は書道部で、今日は活動日……のはずなのだけど。

活動場所の多目的室に集まったのは美緒と私のふたりだけだった。

「我々はマジメじゃのう。なあ、沙理さんや」

「そうですねぇ。美緒さんや」

活動は隔週で講師の先生をお招きしている。

けれども、あいにく今日はその先生がお休みで自主練習ということになっていた。

「沙理はどうする? せっかくだから少しやってく?」

「うん。どうしても書きたいのがあってね」

「おっ、意欲的じゃん」

「ふふーん。まーあねー」

本所にいた頃も同じ書道部だった私たち。

こうして一緒に昼休みをすごすのは、まるまる三年ぶりになる。

美緒が本所からB研へ異動になったのは入職して四年目のこと。

そして、その三年後に私が追いかけるようにB研へやってきた。

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