博士と秘書のやさしい恋の始め方
彼も私も、駿くんにとっては“大きいお友達”だもの。

私は小さくふふふと笑うと、肌触りのよいコットンの毛布を巻き込みながら、ごろろんと転がって彼のそばへすり寄った。

「楽しみですね。ハロウィンイベント」

「駿くんにとって、俺はお邪魔かもしれないが」

「え?」

「すっかりライバル視されているからな、最近は」

ちょっぴり不貞腐れてぶつくさ言う彼が、おもしろいやら可愛いやら。

まったく、6歳児と張り合うとは大人げない。

「“私のために争ったりなさらないでっ”」

「沙理は嬉しそう、というか楽しそうだな」

「頑張ってください。若さと無限の可能性という点では、駿くんのほうが上ですよ」

「確かに、若さばかりはどうにもならないな。だが――」

彼の手が私の髪をしっとりと撫でる。

近づく優しい気配と、ちょっぴり熱っぽい眼差しに、私は黙って目を閉じた。

「オトナだからできるということもある」

今夜、何度目のキスだろう。そう、彼はコドモじみた可愛いところもあるけれど、立派な“いいオトナ”なのだから。

「オトナっぽいですね」

「“ぽい”ではなく、正真正銘のオトナだろ」

「コドモっぽいところもあるじゃないですか、靖明くんは」

「……否定も肯定もしないでおく」

彼は「ごろにゃん」と鳴いたりはしなかったけど、私をお気に入りのぬいぐるみのように抱えたまま眠りについた。

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