博士と秘書のやさしい恋の始め方
レイアウト変更が必要なのは主にテクニカルの居室と実験室。

RAがゴールデンウィーク明けからさらに増えるので、その前に環境を整えておく必要がある。

とりあえず、作業は研究員とテクニカルの真鍋さんの男性四人で行うつもりだったのだが……。

「いいんですか、山下さんは」

「大丈夫です。布川先生の許可は既にいただいています」

いや、そういうことではなく……。確かに、秘書やテクニカルの休日出勤にはチームリーダーの了解が必要だが。聞きたかったのはそういうことではない。

「貴重な休日ですよ?」

テクニカルの居室のレイアウト変更にも関わらず、真鍋さん以外のスタッフ――つまり、女性スタッフたちは休日出勤が免除されている。

業者も入るし力仕事がメインだからというのがその理由、ということになってはいるが実際は……。女性スタッフは全員が既婚者で、休日出勤を頼みにくいという事情があった。

なにせ、テクニカルの主力はベテランの女性スタッフたち。彼女たちのご機嫌を決して損ねることのないように、というのが布川先生の方針だ。

それに便乗して歴代秘書たちは休日出勤などしたことがなかったが……。

「いいんです。どうせ休みの日なんていつもだらだら寝て終わってしまいますし。せっかくなので普段できない備品庫の整理などをまとめてやってしまえたら、と」

この人は、どこまで仕事熱心なのだろう。それはもちろん、こちらとしてはありがたいし、素晴らしいことに相違ないが。しかし、いいのだろうか……。

とはいえ、家具の移動や配線など女性には不向きの作業がメインでも、物を動かせばそれなりに細かい掃除なども必要になるし。

「それはまあ……正直、山下さんが手伝ってくれると助かりますが」

「はい、私にできることなら」
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