博士と秘書のやさしい恋の始め方
私がちょうど備品庫の整理を始めたとき、先生はここへちょっと様子を見に来てくれた。そして「実験室のほうの立ち会いが終わったらこちらへ来るから」と約束してくれたのだった。
でも実際は、その立ち会いに思いのほか時間がかかってしまったようで……。
「そんなっ、謝らないでください。だってほら、たぶん布川先生効果だと思うんですけど、収納用品の組み立ても設置も業者さんがやってくれましたし」
「それは、そうかもしれないが……」
結果オーライにもかかわらず、釈然としないという表情の田中先生。その気持ちがなんだかとても嬉しかった。
ところで、実は私にはさっきからずっと気になっていることがあった。
田中先生が妙に大事そうに持っている段ボール。あとで捨てるにしても、とりあえずその辺の壁に立てかけておけばいいものを……。
もしかして、借用機器が入っていた箱なので返却するときまた使うとか?だからそのときまで大事に保管しておいて欲しいとか?何か特別な用途があるのかな?
「先生、その段ボールは……?」
「そうそう、そうでした。良さそうな段ボールがあったので持ってきましたが、今すぐ入りますか?」
「入りませんっ」
ぜんぜん特別な用途じゃなかった……というか、田中先生が「山下は絶対に段ボールに入る」という前提で話をする件。
「では後で?」
「今すぐも後でも入りませんっっ」
「そうですか」
まったく、先生がこんなにも人をおちょくるのが好きな御仁だったとは。
だいたい、良さそうな段ボールっていったい……。入り心地がとか、そういう意味ですか?
でも実際は、その立ち会いに思いのほか時間がかかってしまったようで……。
「そんなっ、謝らないでください。だってほら、たぶん布川先生効果だと思うんですけど、収納用品の組み立ても設置も業者さんがやってくれましたし」
「それは、そうかもしれないが……」
結果オーライにもかかわらず、釈然としないという表情の田中先生。その気持ちがなんだかとても嬉しかった。
ところで、実は私にはさっきからずっと気になっていることがあった。
田中先生が妙に大事そうに持っている段ボール。あとで捨てるにしても、とりあえずその辺の壁に立てかけておけばいいものを……。
もしかして、借用機器が入っていた箱なので返却するときまた使うとか?だからそのときまで大事に保管しておいて欲しいとか?何か特別な用途があるのかな?
「先生、その段ボールは……?」
「そうそう、そうでした。良さそうな段ボールがあったので持ってきましたが、今すぐ入りますか?」
「入りませんっ」
ぜんぜん特別な用途じゃなかった……というか、田中先生が「山下は絶対に段ボールに入る」という前提で話をする件。
「では後で?」
「今すぐも後でも入りませんっっ」
「そうですか」
まったく、先生がこんなにも人をおちょくるのが好きな御仁だったとは。
だいたい、良さそうな段ボールっていったい……。入り心地がとか、そういう意味ですか?