博士と秘書のやさしい恋の始め方
私は思わず苦笑い。けど、先生は特に笑うでもなく真っ直ぐに私を捉えていた。
な、なんだろう? やっぱりちょっと表情が読めない……。
田中先生って喜怒哀楽の怒と哀が特にわかりにくい気がする。
はっ、まさか……せっかく選んで持ってきた段ボールに私がノリノリで入らなかったので機嫌を損ねてしまったとか?
「それ、似合いますね」
「えっ」
だしぬけに言われて何のことかわからなかった。
「何と言うのでしたっけ。エプロン、じゃなくて――」
「あ、割烹着です」
「そうでした、割烹着。なんだかとても馴染んでいますね」
先生、なかなかの鋭い観察眼です。割烹着は私にとって書道をやるときの必須アイテムで、すっかり着なれたものだから。
特に今日着ているのは、小さな黒猫と白猫がプリントされた猫柄の割烹着。祖母が作ってくれたお気に入り一枚だ。
だから、似合うと言ってもらえてとっても嬉しいのだけど……嬉しすぎて、なんだかすごく照れくさくて返答に困ってしまった。
「えーと、完全におばちゃんってことでしょうか……」
素直じゃないな、私……。
「誰もそんなことは言っていない」
「だって、決しておしゃれではないですし」
もちろん愛用者の私にとってはちょっと可愛い優れものだけど。
「おしゃれ云々の話はわかりませんが。機能的なようですし、働き者の山下さんにはよく似合っていると思います」
「そう、でしょうか……?」
「そうですよ」
田中先生はとても真面目な顔で言った。
「えと……ありがとうございます」
「いえ、事実ですから」
な、なんだろう? やっぱりちょっと表情が読めない……。
田中先生って喜怒哀楽の怒と哀が特にわかりにくい気がする。
はっ、まさか……せっかく選んで持ってきた段ボールに私がノリノリで入らなかったので機嫌を損ねてしまったとか?
「それ、似合いますね」
「えっ」
だしぬけに言われて何のことかわからなかった。
「何と言うのでしたっけ。エプロン、じゃなくて――」
「あ、割烹着です」
「そうでした、割烹着。なんだかとても馴染んでいますね」
先生、なかなかの鋭い観察眼です。割烹着は私にとって書道をやるときの必須アイテムで、すっかり着なれたものだから。
特に今日着ているのは、小さな黒猫と白猫がプリントされた猫柄の割烹着。祖母が作ってくれたお気に入り一枚だ。
だから、似合うと言ってもらえてとっても嬉しいのだけど……嬉しすぎて、なんだかすごく照れくさくて返答に困ってしまった。
「えーと、完全におばちゃんってことでしょうか……」
素直じゃないな、私……。
「誰もそんなことは言っていない」
「だって、決しておしゃれではないですし」
もちろん愛用者の私にとってはちょっと可愛い優れものだけど。
「おしゃれ云々の話はわかりませんが。機能的なようですし、働き者の山下さんにはよく似合っていると思います」
「そう、でしょうか……?」
「そうですよ」
田中先生はとても真面目な顔で言った。
「えと……ありがとうございます」
「いえ、事実ですから」