博士と秘書のやさしい恋の始め方
ひととおり散策して、花壇のお花にお水をあげて、それからお家へお邪魔した。

中へ入ると立派なテーブルがあり、食事が用意されていた。なるほど、これが先生方の言っていた「手料理」ね。

だけど……。

「“スズキのポワレ・潮風薫る爽やかソース添え”って……」

お家の手料理の域をかるーく超えている気がするのですが。

もちろん、ここはあくまでゲームの世界。

でもそれにしたって、いちいちすべてが意外というか。

だって、花と草木でいっぱいのラブリーなお庭も、色とりどりの野菜が育った立派な畑も、メルヘンな真っ白いお屋敷も、手の込んだお料理も、何もかも田中先生のイメージかというと、やっぱりちょっと……。

プライベートの田中先生って、どんな感じなんだろう? 

田中先生のこと、もっと知りたいな。

先生ともっといろんな話をしてみたい。

仕事の話じゃなくて、もっと別のいろんな話を。

職場の仲間を飛び越えて、もっと別の……。

と、いうわけで――。

《山下です。沖野先生のお誘いで始めてみました。よかったらお友達になってください。よろしくお願いします。》

まずは“お友達”から。

まあ、ゲームの世界なわけだけど。それでもいい。

私は“申請する”のボタンを押して、ニュートリノさんへのメッセージを送信した。
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