博士と秘書のやさしい恋の始め方
とにかく今はこうして楽しさや嬉しさを共有できるだけでも幸せだ。
「先生、あの……」
「え?」
山下さんは何やらあらたまった感じで俺をまっすぐに見つめていた。
そのひどく真剣で思いつめたような眼差しに、思わずごくりと息を飲む。
「……なんでしょう?」
「これからもどうぞよろしくお願いしますっ」
そうして山下さんは先ほどのように、またまた深々と頭を下げた。
俺ときたら情けないことに、またもや彼女の心理がつかめない……。
女性心理とは何故にこうも複雑で難解なのだろう。
とりあえず、よろしくお願いしたいのは俺のほうだ。そのことだけは間違いない。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
本当に心からそう願って、折り目正しく頭を下げた。
彼女がそうしてくれたように、心をこめて。
すると、山下さんは幾分ほっとした様子で再び笑顔を見せてくれた。
「また遊びに行かせてください。もちろん、私のところへもぜひ」
「ありがとうございます。山の幸、ごちそうさまです」
「あっ、貝殻のネックレスありがとうございますっ」
「気に入ってもらえてよかった。そうだ、出張土産があるんです」
危ないあぶない、話に夢中になってうっかり出しそびれるところだったではないか。
持参した紙袋の中には、きれいに包装された大きめの箱と、可愛らしく包装された小さめの箱がひとつずつ。
まずは大きいほうを取り出して、ひょいと彼女に差し出した。
「こちらはラボ用に。薄皮まんじゅうです。温泉に行ったわけではないですが」
「わあー、ありがとうございます。テクニカルさんたち大喜びですよ。私も大好きです」
まるで無邪気な子どもみたいに、ニコニコと笑顔いっぱいで喜ぶ山下さん。
ま、本命はこの次なのだが。
「それから、これは山下さんに」
猫の足跡模様がプリントされた包装紙に、オレンジ色のリボンを結んだプレゼント。
俺はそれを彼女が手に持っている饅頭の箱の上にちょんとのせた。
「ええっ、私にですか?」
「あなたに、です。ちょっとした感謝の気持ちです」
「先生、あの……」
「え?」
山下さんは何やらあらたまった感じで俺をまっすぐに見つめていた。
そのひどく真剣で思いつめたような眼差しに、思わずごくりと息を飲む。
「……なんでしょう?」
「これからもどうぞよろしくお願いしますっ」
そうして山下さんは先ほどのように、またまた深々と頭を下げた。
俺ときたら情けないことに、またもや彼女の心理がつかめない……。
女性心理とは何故にこうも複雑で難解なのだろう。
とりあえず、よろしくお願いしたいのは俺のほうだ。そのことだけは間違いない。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
本当に心からそう願って、折り目正しく頭を下げた。
彼女がそうしてくれたように、心をこめて。
すると、山下さんは幾分ほっとした様子で再び笑顔を見せてくれた。
「また遊びに行かせてください。もちろん、私のところへもぜひ」
「ありがとうございます。山の幸、ごちそうさまです」
「あっ、貝殻のネックレスありがとうございますっ」
「気に入ってもらえてよかった。そうだ、出張土産があるんです」
危ないあぶない、話に夢中になってうっかり出しそびれるところだったではないか。
持参した紙袋の中には、きれいに包装された大きめの箱と、可愛らしく包装された小さめの箱がひとつずつ。
まずは大きいほうを取り出して、ひょいと彼女に差し出した。
「こちらはラボ用に。薄皮まんじゅうです。温泉に行ったわけではないですが」
「わあー、ありがとうございます。テクニカルさんたち大喜びですよ。私も大好きです」
まるで無邪気な子どもみたいに、ニコニコと笑顔いっぱいで喜ぶ山下さん。
ま、本命はこの次なのだが。
「それから、これは山下さんに」
猫の足跡模様がプリントされた包装紙に、オレンジ色のリボンを結んだプレゼント。
俺はそれを彼女が手に持っている饅頭の箱の上にちょんとのせた。
「ええっ、私にですか?」
「あなたに、です。ちょっとした感謝の気持ちです」