博士と秘書のやさしい恋の始め方
いつもお世話になっているお礼に。感謝のしるしに。
理由はいくらでもつけようがある。
しかしながら、つまるところは――俺がそうしたかったから。
彼女を驚かせて、喜ばせたかったから。彼女の喜ぶ顔を、俺が見たかったから。
「どうぞ、開けてみてください」
俺は彼女から饅頭の箱をさっと預かると、あらためてリボンのついた箱のほうだけ手渡した。
「それじゃあ、遠慮なく開けさせていただきますね」
山下さんはそう言いつつ遠慮がちに微笑むと、丁寧にリボンをほどいて慎重に包装紙を開いていった。
その様子がなんだかいかにも彼女らしくて、もうそれだけで買ってきた甲斐があった気がした。
さて、肝心の中身はどうだろう?
彼女は気に入ってくれるだろうか?
いや、絶対に気に入ってくれるに違いない。
「ああっ、猫だ! これって、サブレですよね? 猫ちゃんサブレ」
反応は予想以上だった。箱の中身は猫型サブレ。
三角の耳に丸みを帯びた背中、くるりと長いかぎ尻尾がよくできている。
「気にいってもらえましたか?」
「もちろんです。ありがとうございますっ」
やや興奮気味に嬉しそうに笑顔をほころばせる彼女にほくそ笑む。
猫好きがこれを喜ばないわけがないからな。
「うぅー、可愛すぎて食べるのがもったいないですね。可愛そうな気もしますし」
「頭からでも尻尾からでも。好きなところからいっちゃってください」
「悩みます……」
「食べないほうが可愛そうですよ」
せっかく買ってきたのだから美味しく食してもらわないと。
買ってきた俺も可愛そうじゃないか。
「先生」
「はい?」
「つきあってくださいますか?」
「え?」
山下さん、今なんと???
理由はいくらでもつけようがある。
しかしながら、つまるところは――俺がそうしたかったから。
彼女を驚かせて、喜ばせたかったから。彼女の喜ぶ顔を、俺が見たかったから。
「どうぞ、開けてみてください」
俺は彼女から饅頭の箱をさっと預かると、あらためてリボンのついた箱のほうだけ手渡した。
「それじゃあ、遠慮なく開けさせていただきますね」
山下さんはそう言いつつ遠慮がちに微笑むと、丁寧にリボンをほどいて慎重に包装紙を開いていった。
その様子がなんだかいかにも彼女らしくて、もうそれだけで買ってきた甲斐があった気がした。
さて、肝心の中身はどうだろう?
彼女は気に入ってくれるだろうか?
いや、絶対に気に入ってくれるに違いない。
「ああっ、猫だ! これって、サブレですよね? 猫ちゃんサブレ」
反応は予想以上だった。箱の中身は猫型サブレ。
三角の耳に丸みを帯びた背中、くるりと長いかぎ尻尾がよくできている。
「気にいってもらえましたか?」
「もちろんです。ありがとうございますっ」
やや興奮気味に嬉しそうに笑顔をほころばせる彼女にほくそ笑む。
猫好きがこれを喜ばないわけがないからな。
「うぅー、可愛すぎて食べるのがもったいないですね。可愛そうな気もしますし」
「頭からでも尻尾からでも。好きなところからいっちゃってください」
「悩みます……」
「食べないほうが可愛そうですよ」
せっかく買ってきたのだから美味しく食してもらわないと。
買ってきた俺も可愛そうじゃないか。
「先生」
「はい?」
「つきあってくださいますか?」
「え?」
山下さん、今なんと???