裏アリ男子にご注意ください!



都築くんは、やれやれといった感じであたしを見ていた。



「席がひとつ空いててとってあげようと思ったらいなくなってるし」



「ご、ごめんなさい……」



「さ、こっち来て」



都築くんはあたしの手をつかんで引く。



人ごみをかきわけて来たのは、座席の前。そこには荷物が置いてある。



「座って」



都築くんはその荷物をとって言った。



「あ、ありがとう……でも、いいのかな?」



こんなふうに席とっちゃって……。



訊くと、都築くんは言った。それはもうさわやかに。



「澤上さんにヘンなことするヤツがいたら困るだろ?」



えっ……あたしのために? あの都築くんが?



なんだ、都築くんってばちょっと優しいところも……。



「世の中には、澤上さんみたいなヤツでもなんでもいいっていう特殊な趣味をもつ人もいるみたいだし」



あるじゃ……ん?



……あ、前言撤回。



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