網の中の眠り姫
命日の出来事
真夏の「墓参り」
まのんちゃん。今日は命日だね。
僕は、毎年恒例となっているこの「墓参り」の日、いつもと同じ道を歩いていた。
まのんちゃんはアイドルだったが、遺書も残さずに、突然自殺してしまった。後に残されたのは、僕たちファンと、彼女が常日頃からまめに更新していたブログ。彼女とのつながりは、そこでのコメントが主だったが、僕の高校時代という青春らしい時期は、その交流だけで満ち足りたものだった。
「いらっしゃい」
僕は、毎年立ち寄る花屋に今年も入った。鮮やかな色をした、夏らしい花たちが咲き誇っている。僕は、花のことはよく分からなかったが、いつも花束を作ってもらうときは、まのんちゃんのイメージをメモに書いて持っていくのだった。花屋のオーナーは、適当な世間話をしながら、メモをちらちら見て、あっという間にきれいな花束をこしらえる。その色合いやアレンジメントが毎年異なるので、実は密かに楽しみにしているのだが、今年はトルコキキョウという花がメインだった。涼しげな色で、まのんちゃんの可憐で清純なイメージにぴったりだった。
「まのんちゃんでしょう」
オーナーが、会計の後に聞いてきた。まのんちゃんの自宅はこの近くにあるので、彼女をよく知っているのかもしれなかった。
「僕らの世代より下の子ですが、可愛かったですね。亡くなった時は残念でしたよ」
オーナーは、しんみりとおつりを渡してくれた。僕は、一年に一度の奇妙な付き合いを続けている彼に、初めて親近感が湧いた。
僕は、毎年恒例となっているこの「墓参り」の日、いつもと同じ道を歩いていた。
まのんちゃんはアイドルだったが、遺書も残さずに、突然自殺してしまった。後に残されたのは、僕たちファンと、彼女が常日頃からまめに更新していたブログ。彼女とのつながりは、そこでのコメントが主だったが、僕の高校時代という青春らしい時期は、その交流だけで満ち足りたものだった。
「いらっしゃい」
僕は、毎年立ち寄る花屋に今年も入った。鮮やかな色をした、夏らしい花たちが咲き誇っている。僕は、花のことはよく分からなかったが、いつも花束を作ってもらうときは、まのんちゃんのイメージをメモに書いて持っていくのだった。花屋のオーナーは、適当な世間話をしながら、メモをちらちら見て、あっという間にきれいな花束をこしらえる。その色合いやアレンジメントが毎年異なるので、実は密かに楽しみにしているのだが、今年はトルコキキョウという花がメインだった。涼しげな色で、まのんちゃんの可憐で清純なイメージにぴったりだった。
「まのんちゃんでしょう」
オーナーが、会計の後に聞いてきた。まのんちゃんの自宅はこの近くにあるので、彼女をよく知っているのかもしれなかった。
「僕らの世代より下の子ですが、可愛かったですね。亡くなった時は残念でしたよ」
オーナーは、しんみりとおつりを渡してくれた。僕は、一年に一度の奇妙な付き合いを続けている彼に、初めて親近感が湧いた。