網の中の眠り姫
網の中の眠り姫
「みなさん、お揃いですね」
上品な紳士が、僕たちの母校のパソコンルームに姿を見せた。
「先生、お久しぶりです」
みんなが口々に挨拶する。この人は、僕たちの担任だった松村先生だ。少し痩せたようだが、品のいい笑みは相変わらずだった。先生も、この「墓参り」には欠かさずやってくる。まのんちゃんの担任でもあったのだから、当然かもしれないが、三周忌にも会えるとは思っていなかった。
「おお、花がきれいですね。みなさんの花に比べると、私の花は貧弱ですが」
みんなが持参して、部屋の花瓶に美しく飾られた花たちを見て、先生は照れたような笑みを浮かべて、つつましく咲いているヒメヒマワリの花束を机の上に置いた。その机の上には、まのんちゃんの遺影が飾られており、先生は帽子を取って、手を合わせた。
「先生、やりましょうか」
村上が声をかけた。実は彼が、この「法要」兼「墓参り」の発案者なのだ。
みんなが席につき、めいめいのパソコンの電源を入れた。そして、静かにキーを叩いて、皆ほぼ同時に、あるサイトを画面に表示した。
「お墓の中の眠り姫」
そのサイトのタイトルが、一年ぶりに目に飛び込んできた。
これは、まのんちゃんのサイトだ。精神的に不安定だった彼女の、時に悲しく時に優しい日記が綴られている。
僕たちは、クラスのアイドル・高瀬まのんちゃんのサイトを欠かさずチェックしていた。そう、彼女が自殺した夜も。そして、そのままご両親からサイトの管理を委託されて今に至る。毎年この時期には、「法要」兼「墓参り」として、ファンを主としたクラスの有志が集まって、彼女の面影を留めたこのサイトを閲覧して、彼女を偲ぶのだ。
しばらく、誰も何も言わなかった。ただ、花の芳しい香りに包まれて、僕らは在りし日のまのんちゃんと、過ぎ去った自身の青春を想起していた。
上品な紳士が、僕たちの母校のパソコンルームに姿を見せた。
「先生、お久しぶりです」
みんなが口々に挨拶する。この人は、僕たちの担任だった松村先生だ。少し痩せたようだが、品のいい笑みは相変わらずだった。先生も、この「墓参り」には欠かさずやってくる。まのんちゃんの担任でもあったのだから、当然かもしれないが、三周忌にも会えるとは思っていなかった。
「おお、花がきれいですね。みなさんの花に比べると、私の花は貧弱ですが」
みんなが持参して、部屋の花瓶に美しく飾られた花たちを見て、先生は照れたような笑みを浮かべて、つつましく咲いているヒメヒマワリの花束を机の上に置いた。その机の上には、まのんちゃんの遺影が飾られており、先生は帽子を取って、手を合わせた。
「先生、やりましょうか」
村上が声をかけた。実は彼が、この「法要」兼「墓参り」の発案者なのだ。
みんなが席につき、めいめいのパソコンの電源を入れた。そして、静かにキーを叩いて、皆ほぼ同時に、あるサイトを画面に表示した。
「お墓の中の眠り姫」
そのサイトのタイトルが、一年ぶりに目に飛び込んできた。
これは、まのんちゃんのサイトだ。精神的に不安定だった彼女の、時に悲しく時に優しい日記が綴られている。
僕たちは、クラスのアイドル・高瀬まのんちゃんのサイトを欠かさずチェックしていた。そう、彼女が自殺した夜も。そして、そのままご両親からサイトの管理を委託されて今に至る。毎年この時期には、「法要」兼「墓参り」として、ファンを主としたクラスの有志が集まって、彼女の面影を留めたこのサイトを閲覧して、彼女を偲ぶのだ。
しばらく、誰も何も言わなかった。ただ、花の芳しい香りに包まれて、僕らは在りし日のまのんちゃんと、過ぎ去った自身の青春を想起していた。