不機嫌な彼のカミナリ注意報
 私は彼に別れを告げた。
 なのに彼は、どうして? と、不思議そうな顔をしていた。

 このとき思った。私の“好き”と、斗夜の“好き”は、元々が違うのだと。

 私の“好き”は相手が唯一だ。
 だけど斗夜は違う。多数の女性に“好き”を振りまく。

 どちらが正しくて、どちらが間違ってるかなんて、偉そうなことは私には言えないけれど。
 私とは価値観が違うのだけはたしかだった。


「早く忘れろ」

 しばらくの沈黙の後、うつむく私の頭の上にポツリと言葉が落ちてきて、ギュっと握り締めていた拳の上に大きな温かい手が乗せられた。

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