不機嫌な彼のカミナリ注意報
 残業中、姿を消していた瀬戸が戻って来て俺のデスクに缶コーヒーをコツンと置く。

「差し入れ」

「……悪いな」

 瀬戸が俺にコーヒーの差し入れをするなんて気味が悪い。なにかを企んでいるように感じる。

「ねぇ、この前の話なんだけど」

「この前って?」

「緒川さんをうちのチームに、って話」

 なんだ……あれは冗談ではなく本気だったのか。
 フゥーっと俺は小さく溜め息を吐き、まだ開けていなかった缶コーヒーを瀬戸につき返す。

「悪いがそれは無理だ」

 緒川を瀬戸のチームには絶対に渡せない。清瀬と交代だと? 笑えない冗談だ。

< 230 / 328 >

この作品をシェア

pagetop