不機嫌な彼のカミナリ注意報
 夢を見てうなされているのか、アイツがうわごとのように『トーヤ』と男の名を呼んだ。
 俺はわざわざ指摘しなかったが、眠りながらもアイツの目尻から涙がこぼれていた。

 尋ねてみれば、それは元カレだそうだ。
 一年も前に別れた、相当の遊び人の男なのだとか。

 それで次は彼女持ちの笹岡か……。
 あの計算高い清瀬から奪い取れるとは思えないが。

 前途多難な恋愛模様の緒川を想像し、同情しながら俺は会社をあとにした。

 だいたい、俺はなぜここまで緒川のことが気にかかるんだ?
 なぜこんなに構う?

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