不機嫌な彼のカミナリ注意報
「お疲れ様です。お先に!」

 定時になると、同僚がどんどん帰宅していく。残業がなければ当然だ。

「終わったか?」

 斜め前から風見さんの声が飛んできて、私は自然とそちらに目を向けた。

「途中まで終わった分はプリントアウトできています。最後の1枚だけ作業がまだなので、もう少し待っていただけますか?」

 私がそう返事をすると、風見さんは立ち上がって笹岡さんのデスクの椅子に腰を下ろした。
 急に隣にやって来られ、緊張が走る。

 長い脚を組んで座り、風見さんは私がプリントアウトした書類に目を通していく。


< 26 / 328 >

この作品をシェア

pagetop