不機嫌な彼のカミナリ注意報
 私もそれはわかっていて、反則だと思ったりする。
 ふとしたやさしさが、胸にズキュンとくるから。

「風見くんてさぁ、けっこう顔はいいじゃない? だからあんな態度でもちょっとやさしいところを見せると、女性が寄ってきちゃうんだって」

 嫌味だよね、なんておどけた表情を見せる瀬戸さんに、笑いながらうなずいた。

「総務の後輩の子が言ってました。風見さんに告白する女性はけっこう多いって……」

「はは。さすが我が総務部。情報が早いし当たってる」

 バンバンと膝を叩いて笑う瀬戸さんは、けっこう酔ってきてるみたい。さっきから顔が真っ赤だ。

「でもさぁ、アレはないよね」

「……アレ?」

「私も入社して初対面でいきなり言われたんだけど。『俺に、絶対惚れるな』だって。初対面だよ? もうドン引きだった」

「……あ……」

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