不機嫌な彼のカミナリ注意報
「松本さん……かわいそうに」

 隣のデスクから笹岡さんがポツリとつぶやく声が聞こえ、それに思わず反応した私と目が合った。

 風見さんがすぐ近くにいるから、この件で笹岡さんと会話することはできなかったけれど。
 笹岡さんは苦笑いで『仕方ないよね』と物語っている表情をしていた。

 私がマーケティング部に異動になってから、今日で早くも二週間が過ぎた。
 だけど風見さんがここまで激高しているのを見るのは初めてだ。

『遅い!』だの、『違ってるぞ!』だの、端的に鋭い言葉を浴びせられることは日常茶飯事だけど。

 今回はよほどのことがあったのだろうか。

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