不機嫌な彼のカミナリ注意報
「寧々はさ、仕事ができるから抜擢されたんだよ。一番いい人材をマーケティング部に取られちゃったわ」

 真那が口を尖らせて舞花に説明していたけれど、それは違うと思う。

「そんなんじゃないよ。私は雑用みたいな仕事も多いし、それを毎日こなしてるだけだもん」

「寧々は自分のことがわかってないよね」

 そんなふうに言ってもらえると、素直に嬉しい。
 この三年の働きぶりを見てくれている人がいるだけで心が満たされる。

「異動って言っても支社に転勤じゃないしね。部署が変わると勝手が違うから大変だけど、また一からがんばる」

「だけど異動先が……マーケティング部っていうのがねぇ……」

 あからさまに顔をしかめて真那がテーブルに突っ伏した。
 まるで自分のことのように考えたり悩んだりしてくれる親友を見ていると、心が温かくなってくる。

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