不機嫌な彼のカミナリ注意報
 私が好きなのはクリームパスタだけれど、シェアするのだと思って気を使ったのだ。
 もしも風見さんがクリームパスタが苦手だったらさすがに悪いから、無難なものを選んでおいた。

「好きなの頼めって言ったのに」

 風見さんは呆れた顔をしながらふわっとやわらかく笑った。
 どうやら職場以外だと、けっこう笑ってくれるみたいだ。

 お料理が運ばれてきて、ビールで静かに乾杯をした。
 ボンゴレのパスタもライスコロッケも、驚くほどおいしかった。

「すっごくおいしいです! 風見さんはこういうところによく来るんですか?」

「は?……来るわけないだろう、俺が」

 じゃあ、なぜこのお店を知っているんですかと聞きたくなったけれど、とりあえず今日はこれ以上突っ込まないでおこう。
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