それでも私は
しばらくして、建物の崩壊する音が途絶える。砂埃があたりに舞って、視界を狭める。これでは建物を壊した本人にも見えないはずだから、その隙に逃げないと。
私のちょうど真上を破壊した。それは、私を瓦礫で押しつぶそうとしたのだろう。つまりは、相手はこちらの位置を把握している、そして私を殺してしまおうと考えているのかもしれない。
こんな破壊の仕方、能力者だろう。
前へ飛んでから、破壊により起こった風でゴロゴロと転がったせいか、全身が痛む。空気も悪く咳が出そうだ。目に砂埃が入ったせいで、涙が出る。
最後の力を振り絞るように両手を床につけ起き上がると、背中に乗っていた瓦礫のくずがパラパラと落ちた。
「動くな。」
その声がやたらと冷えて感じたのは、冷たい感触が首にしたせいだろうか。
一瞬にして後ろから髪を捕まれ引っ張られ、よく見えるようになった喉元にナイフが当てられていた。
普通に空気を吸い込んだつもりが、ヒュッと情けない音が出る。
捕まえられた。