それでも私は


「共犯者になるか、死ぬか。」

言葉少ない彼だが、それが選択肢だということにすぐにわかった。
そんなの、決まってる。迷うまでもない。

「いいよ、共犯者になる。」


掠れる声で返事をした。

「何の共犯者かわかんねぇのに、いいのか?」

「ええ。だってここで殺されたら私は永遠に実験体のまま。一生死ねないもの。」

そう、死ねないのだ。その言葉に疑問を持ったように見えたが、そうか、と彼は言った。


そしてなにかボタンのついた機械を渡された。



「それを押せば、俺の仲間が仕掛けた爆弾が爆発する。この研究所は瓦礫の山になるだろうな。」


手のひらサイズのそれは、とんでもないものだった。


「それを押せば俺らの共犯者だ。逃げ出したあと、“こういうこと”の手伝いはしてもらうことになるが、生活は保証してやる。」


甘美な誘い。だけどそれに続くのは

「だがお前にそれを押すことができるか?

この研究所にいる、少なくとも実験体と研究員合わせて100人以上を殺すことになる。
それにこれが一度ではない。今後も続くことになる。」

自分が良い思いをするための犠牲。

甘美な誘いを先に言って期待させてから、罪悪感を煽るなんて酷い人だ。



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