それでも私は
値踏みするような視線を感じる。
だけど。
「ふふ。」
思わず笑いがこみ上げる。
訝しげに彼はこちらを見たが、気にならないほどに楽しくなった。
「これ1つでこの研究所、ぶち壊せるんだ。」
犠牲について教えてくれた彼には悪いが、私は“そんなこと”に躊躇なんてない。
ここの研究員は私のことを散々弄り倒したんだ。
まともに死ねないようにもされたんだ。
むしろ、“ざまぁみろ”。
いや、簡単に殺してしまうのも、もったいないぐらいだ。
それに私はこれからも殺し続けることになろうが、“そんなこと”苦にもならない。
ここから抜け出せて、さらに生活も保証してもらえるなんて、こんなにいい話はない。
迷いなんて一切ない。
「いつ、押せばいい?」
「はは、怖い女だな。」
「でも私が押さなければ、あなたがこれを押していたのでしょう。」
「そうだな。」
「怖い男。」
ちょっとした意趣返しだ。
そう言うとほぼ同時に、彼は止まった。
そして私を下ろし、研究所の方向へと向かせる。
「いつでもどうぞ。」
「じゃ、遠慮なく。」
ーーー建物の天井を破壊した時と比べ物にならない程の音を立てて、研究所は潰れた。
こうして私は彼らの共犯になった。