それでも私は

値踏みするような視線を感じる。
だけど。

「ふふ。」

思わず笑いがこみ上げる。
訝しげに彼はこちらを見たが、気にならないほどに楽しくなった。


「これ1つでこの研究所、ぶち壊せるんだ。」


犠牲について教えてくれた彼には悪いが、私は“そんなこと”に躊躇なんてない。

ここの研究員は私のことを散々弄り倒したんだ。
まともに死ねないようにもされたんだ。

むしろ、“ざまぁみろ”。
いや、簡単に殺してしまうのも、もったいないぐらいだ。

それに私はこれからも殺し続けることになろうが、“そんなこと”苦にもならない。

ここから抜け出せて、さらに生活も保証してもらえるなんて、こんなにいい話はない。
迷いなんて一切ない。

「いつ、押せばいい?」


「はは、怖い女だな。」


「でも私が押さなければ、あなたがこれを押していたのでしょう。」


「そうだな。」


「怖い男。」

ちょっとした意趣返しだ。
そう言うとほぼ同時に、彼は止まった。
そして私を下ろし、研究所の方向へと向かせる。


「いつでもどうぞ。」


「じゃ、遠慮なく。」







ーーー建物の天井を破壊した時と比べ物にならない程の音を立てて、研究所は潰れた。


こうして私は彼らの共犯になった。


< 7 / 8 >

この作品をシェア

pagetop